予定よりもロスサントスに帰ってくるのが遅くなってしまった。
18時頃、街の空港に着いた。街の空気は一週間ぶりですごく懐かしく、どこかいつもと違うような感覚を感じた。そうかわたしは日本で実の父をこの手で殺めてきたからここを旅立った私とは少し違うのか―。
…案外悪くないわね。
空港に着き、まず車がないことに気づく。「そっか、帰れないじゃん」
今この街には私の帰る場所がある。安心できる場所がある。そう思ったら弟のキミトスにすごくに会いたくなった。
弟の所属している、街の一番古いギャング”MOZU”の無線番号を共有しているため無線をつないでみる。「誰かいますか?」この問いかけに一番に反応してくれたのが一番反応してほしかった弟だった。離れていたのはたかが一週間だけど、再会をはたしてからこんなに話してなかったのは、距離が離れていたのは初めてだったのでなんだかすごく嬉しかった!何をしてるか聞いたらお花摘み(この街のドラッグに使う素材)をしているとのこと。普段、そういう作業は一番苦手としているのは知っているから「え!?どうしたの??」ってめっちゃびっくりしたけどすぐに空港に迎えに行くねって言ってくれて弟が可愛くて仕方ない。世界で一番可愛いのではないか??なんてね(笑)
数分後にキミトスが迎えに来てくれて車の中で久しぶりに和気あいあいと会話。生き別れの姉弟だけど離れていた時間を埋めるかのような2人の会話の時間は大好きなの♪
一週間何していたのか、花摘みするなんてどんな風の吹き回しなのか、いろいろ質問攻めにしちゃった(笑)
過去のことはまだまだ知らないこと沢山あるけど、再会できてからのことはせっかくだし色々聞きたいもん!
私のお店「eight」に着いてから日本での話をキミトスにした。「父を殺してきた。」この言葉を聞いて動揺はしていたものの弟も「ま、いっか。」って(笑)さすが我が弟!元々キミトスは父を恨んでいたし、いつかは自分で殺そうと決めていたそうだから私が殺しちゃって少し申し訳なかったかな。でも父と話した際に、あの人は「家族なんて私にはいらなかった。邪魔なだけだ何にもならん。」そう言って必死に生きてきた私たち家族を否定してきたの。母の苦労、弟の孤独、いろんなことが脳裏をよぎり、知らないうちに日本で準備していた銃で父を撃ち殺していた。最期は何も言わせなかった。でも汚い血で私の服が汚されたのがむかついたかな。
そのあと日本では、海に行ったり意味もなく街を歩いてみたりして気を落ち着かせていたの。今まで私を邪魔する人をたくさん殺めてきたけど、さすがの私も”肉親”を殺したのは初めてで少しの間は何とも言えない気持ちにさいなまれたわね。でも少しずつ気持ちは溶けていき、何か私は吹っ切れた気分だった。「その時が来たら私はもう迷わない―。」
弟と父の話をしたあとは一緒に花摘みをしてふざけたり、久しぶりに私のもう一つの職場「Project Y」というメカニックの会社で働いた。この街に来てまもない、メカニック歴数日の「CPU」という子が健気に仕事を頑張っていた。
何事にも前向きでわからないことは積極的に聞いてくれる可愛い姿をいつかの弟のように思いながら、私は先輩として教えれることをたくさん教えた。チルいいい時間を過ごせたわ♪
実はこのPYは最近、社長や副社長が各々いろんな悩みを抱えていたの。私は社長の次にこの会社の歴が長くて、バーの女でもあるから相談しやすかったのかな?社長、副社長から各々の相談をされていたの。そういうのも知っていたから会社再建のために私にできることはできるだけやりたいなって。だから最近は本店に社員が少なかったら自分がお店にいるように努力していたつもり。しかし…
PYのメンバーが招集されて社長から言われたのは「PYの解体」「社員全員のクビ」
さすがの私も驚きとショックで会議中は声が出せなかった…。
山本さん(PYを創った前社長)の愛したこの場が街から削除される…。
自分のメカニックの職を失うということよりも、PYが無くなることがとにかくショックだった。車に情熱をささげて、かっこよく仕事をしていた前社長の姿、一緒にバカをしながらも車を見つめる眼が温かさと熱を帯びていたジャー武の姿、メカニック事情が日々変動している中一緒に頑張ってきた子たちとの思い出…いろんなことが走馬灯のように脳裏をよぎった…。「もう少しでお別れか。」
会議が終わり、傷心気味の私はまずはA2というメカニックの社長で、私の相談にいつも厳しくも優しい意見をズバッとくれる大川さんに会いに行きたいと思って車を走らせた。私はこの時、あわよくばA2で働かさせて貰いたいと思っていた。誰かのメカニックで働けば楽だし今まで通りの仕事ができる。PYで働けなくなって寂しいけど好きな仕事に就いてまた車のカスタムや修理をしたい。そう思っていたの。でも大川さんは厳しくも優しい。私の話を聞いてズバッと「自分の店持てばいいじゃん」簡単に言うじゃん!?って驚いた(笑)
私は大川さんよりもメカニックとして全身全霊で働けていないこともある。同じだけの情熱はないかもしれない。それはMOZUの下請けとして弟のためとして、さらにはeightのオーナーとして、私の仕事はメカニックだけではないからっていうのも理由の一つ。大川さんの理想とする「店に居続けるメカニック」ではいれないから。
自分のしたい動きをするには”自分のメカニック”を創るべきっていう私は全く考えもしなかった意見をくれたの。
やっぱり大川さんってすごい…。
大川さんと別れて私は結構真剣に考えた。ある程度顔は広いとはいえ知名度やカリスマ性は私にはない。メカニックとして会社を作ってもお客さんが来てくれる自信は正直全くなかった。でも…ん~…を繰り返していたらふと「PY所属していた、ギャングをしながら、半グレをしながらメカニックをしていた子たちはどうなるんだろう?」そう考えたらその子たちの受け皿のようなお店、いわゆる「黒のメカニック」の会社創ってみるのいいんじゃない?
自由に、これからもメカニックとして動けるのならば喜んでくれる子はいるんじゃないかな。そう思ったら頑張りたいなってすごく思ったの。自分にこんな大きな決断ができるなんて知らなかった(笑)
自分の中で考えがある程度固まったので街で私の信頼しているヴァンさん(MOZUのボス)に電話をして考えを伝えてみた。すぐにはいい反応はなかったけど、面食らったって感じかな?否定が大きくあったわけではなかったのでもう少し詰めてまた相談してみようと思った。ヴァンさんは街で1年以上いて、さらには1年以上がギャングのボスをしているの。PYの前社長ともすごく仲良かったし、何よりも街を長く見てきている方。白、黒、グレーに関してもいろんな見解を持っていて私は困ったことがあったらたまに相談させてもらってる。「もっと視野を広く、しっかり考えてヴァンさんを納得させよう。」
今日は本当にいろんなことが起こった。
父の件、PYの件、メカニック開業の件…今日はもう疲れたから悩みながらもゆっくる休むことにするわね。
またいらっしゃい💋
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